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~ その8 四角四面は司祭の娘。色は白いが腹黒い ~
悔い改めよーっ! |
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ちょ、ちょっと待って! あのね、こう見えて段取りがあるから……
うるちクンお願いっ! |
あっ、待てサクラコ! |
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さ、さて始まりました、騒動魔女長談義八回目。
今年はなんだかすごい雪で
すね。オータムライスフィールドのホリゾンタルハンドじゃ過去最大級の降雪
で屋根より高く積もっちゃってるらしいじゃないですか。
父の友人のヨシダさんによれば、街中でスキーが出来るとか。
まあでもわたし運動神経は悪くないと思うけどインドア派だし、根本的に
そういうの向かないっていうか、スキーウェアが致命的に似合わなくて…… |
貴様のスキーだのキライーだのどーでもいいわーっ!
早くこっちへこんかーっ! |
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ううう……というわけで今日のゲストはコノンさん。なんだかすっごい
不機嫌なんですけど。 |
不機嫌ではない。余はいつもこうだ。司祭だからな。
それよりほれ、
もっとちこう寄れ。そこに座れ。 |
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はいはい。
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たわけ! なんだその体育座りは。それが客人に対する貴様の礼義か! |
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礼儀って、じゃあどーすればいいのよう。 |
九条は東乃国随一の家格と聞くが、では貴様の家で一番儀礼的な座法は
なんだ? |
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ざほう? ……た、建膝(たてひざ)かしら。 |
ではそれをするがよい。なにしろ余は司祭だ。いかなる国家権力とて余の前では塵芥に等しいのだからな。 |
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いやしかし、仮にそうだとしてもそれは少し横暴では…… |
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黙れ犬。神の御使いに歯向かうということは、飼い主の手を咬むのとはわ
けが違うのだぞ? 神意は絶対だ。それに背くなど罷り通らぬ。さもなく
ば百万の鉄球が降り注ぎ、瞬時にして貴様を天へ身罷らんとも限らん。犬
にしては聡明である貴様なら、それくらい弁えられると思うがな。 |
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わ、わかったわよ。ほら、ちゃんと座るから、うるちクンには構わないで。
でも正座で勘弁よ。建膝っていうのは朝廷のご下命を受けるときにするモ
ノだから。 |
よかろう。我が神は寛大だ。それで貴様が敬虔な気持ちになれるのであれ
ばそれでよい。一体信仰には、座り方など無関係だからな。 |
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……なんなのよこのコ。 |
なにか言ったか。 |
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いいえなにも。それよりなんです? こんなに畏まって、一体なんのお話
をするの? |
おはなし? なにを言っておる。貴様はこれから懺悔をするのだ。 |
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ざんげ? ……どおしてよ。わたしなんにもしてないですけど。 |
罪人は皆そう言うのだ。自らの行いを忘れ、時にそれが罪であることにさ
え気付いてもおらん。然るに省みることも出来ず、そしていずれまた同じ
罪を繰り返してしまうのだ。だからこそ厳しく糺さねばならん! |
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だーかーらー、わたしはやましいことなんてしてないの。ううん、むしろ
いいことしてる。昨日だって悪鬼をやっつけに本河田まで行ったし、そりゃ
まあちょっと、お庭の灯篭も一緒に斬っちゃったけど、でもそこんちのお
ばさん許してくれたし、お礼にってヤキイモまでもらったし……
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ではその前はなにをしていたのだ? |
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そのまえ? そのまえって、えとぉ…… |
ネットを見ていたな。今季一番面白いアニメは何かと。修行もせずに。 |
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し、したわよ! 素振り十回。
それよりね、今季のアニメがちょっとびみょ
ーなのよ。あ、そりゃまあいいのもあるんだけどなんて言うの? 前期が
良すぎたっていうか原作のチョイスがいまいちってゆうか…… |
他には? |
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他? あ、今季は意外とオリジナルもののほうがいいんじゃないかなって…… |
そうではなくて、他に何をしていたと聞いておる! |
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ほかって、そうねェ。宿題やってそのあと本読んでゴロゴロして……おこ
たでテレビ見ながらポテチ食べてたかなぁ。 |
しているではないかーーーっ! |
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んなっ、なにをよう! 今の話の中で怒鳴るトコどこよ。 |
ポテチに決まっとるだろーが! 貴様のしていることはれっきとした悪事
だぞ? それも大罪に分類される“大食”ではないか! |
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タイショクぅ!? なによ失礼ねっ、わたし一袋の半分の半分しか食べな
いわよっ!
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黙れ! では怠惰だ。自らの務めも忘れてアニメなどにうつつを抜かしおっ
て。そのうえ修行を怠るなど言語道断。人を守る立場ならなおさら許せん! |
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む。なにかひどくまともなことを言っている気がするぞ。 |
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どこがよ。罪状が大きく変わったわよ。 |
さあ、自らの罪を告白するがいい。そして悔い改めよ。しかし皆の前で気
が引けるというのなら、そこに積んであるだんごで罪を贖ってもらっても
よいぞ? |
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は? おだんご? これ欲しいの? |
ヴァカめ。欲しいのではなく贖罪を認めてやろうというのだ。先も言った
が、我が神は寛大だからな。有り難く思うがいい。 |
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寛大っていうか、思ったより小さな罪でホッとしたわ。
はいどうぞ。
お好きなだけお納めください。 |
うむ! なかなか良い心がけだ。では頂くとしよう。……ふむ、うまい。
塩加減がいいな。 |
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……即食べなんだ。 |
腐ってしまっては元も子もないからな。貴様のためにもこうするのが一番
であろ。 |
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だがこれだけではないぞ? 貴様にはまだ隠していることがあろう? 神
の使いである余はな、目を見れば全てがわかるのだ。さ、全て告白してし
まうがよいぞ? |
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わたしは無実の罪を問うことこそ、人倫の最右翼に関わる罪だと思うのよ
ね。 |
いや、司祭様はもしかしてアレのことを言っているンじゃないか? 先月
の出張の時の。 |
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出張ぉ? ……う、あれかぁ。仕事したあと、コスパ行ったアレ。 |
うむ、申してみよ。……むぐんぐ。 |
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話す筋合いなんてないと思うンだけどね。
……先月、鹿浦ってちょっと遠いトコへ一泊二日で出かけたのよ。
もちろん仕事でね。なんか古い時代の悪霊が街中で暴れてるって
言うから、それなりに準備して。なのに行ってみたらこれがまた見
掛け倒しでさ、わたしの剣見るなり逃げ出しちゃって。それはそれで
追っかけるの疲れたけど、まあ斬るぶんには大したことなかったっ
てゆーか。輪廻より前の時期の悪霊だから、魔素とくっつくかと思っ
たらそれもないし、だからそれで終わりよ。すごくあっけなかったの。
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……貴様はどうやら、なかなかのエクソシストのようだな。 |
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エクソシストじゃないけど。まあそれはいいとしてね、問題はそのあと。
夜中までかかるだろうなあって思ってたのに昼過ぎには終わっちゃったで
しょ? 帰りの汽車は次の日だし、もー時間が余っちゃって余っちゃって。
だからさ、仕方なく行ったのよ、コスパ。別にね、コスプレしたかったと
かそういうンじゃなくて、鹿浦のコのレベルはどんなもんかなーって、ちょっ
と覗くだけのつもりだったの。
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それがおまえときたら。可愛いねーなんて言われてすっかり乗せられちま
いやがって。いったい何回着替えたンだ? あんなの、父上が見たらどう
思われるか。 |
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あ、あのね! へんな言い方しないでよ。ちょっと魔法少女になっただけ
で、そんな変なカッコしてないでしょ。露出度低いのばっかだし、それに
わたし、みさおは固いンだからね。 |
だからってあんなガラのワリぃトコには行くもんじゃねえってハナシさ。
結局おまえ、最終的にはブチ切れてウェイターに刀突き付けて、あれじゃ
魔法少女ってよりキルビルじゃねえか。 |
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だってアイツ、しつこいし。それにわたしのおしり…………触ったし。 |
もぐもぐ、んむ、ごっくん。
では正当防衛ではないか。目には目を
歯には歯をであろ? その何が悪いというのだ? |
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あら、なんだか寛大よね。
そおよ、そう言いたかったの。あれは向こうが
悪い。わたしだってすごいヤだったんだから! |
だからさ、いくら強くたって、子供が夜まで遊んでちゃいけないンだよ。 |
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六時にはホテルにいたモン。そんですぐにごはん頂いてそのあと部屋で宿
題やってさ、終わったらシャワー浴びて髪乾かして、寝る前にテレビ見な
がらちょっとだけケーキ食べて…… |
ケーキだとっ!? がっちりやってるではないかこの大食がぁ~~~っ! |
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んあ~っ、なによ急に! だからちょっとだっつッてンでしょー! |
黙れ黙れ黙れっ! しっかりごはんを食べておきながらその上ケーキのど
こがちょっとだあ! 貴様ぁ、自分のしでかしたことが一体どれほどの悪
事かワカっておるのかっ!?
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コスパで暴れたより大したことないってくらいはね! それにわたし、ご
はんだってあんまり食べない。太りたくないもの。 |
なんだと? ではごはんは何を食べたのだ? ……はむっ、むぐんぐ。 |
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い、いろいろですよ。ハンバーグでしょ、エビフライでしょ、あとカレー
におそばにお寿司に…… |
バカみたいに食っとるではないか! きっさまこの大食めがぁ~~~っ! |
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バイキングだったの! いいからよしなさいよその大食ってゆうのォ! |
だからって……うぐっ!?
がはっ、ごへあっ! げぶあっ、けほっ、こほっ…… |
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むせたむせた。背中さすって差し上げろ。 |
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んもー。もの食べながらおっきな声出すからでしょ。ほら、背中向けて。 |
けふっ、……うぐぅ~、おのれ飽食主義め。もののありがたみも弁えん愚
か者めがぁ。よりにもよって余の好きなモノばかり食べおって、まったく
嘆かわしい~~! |
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それ飽食関係ないじゃん。ただのヒガミってもんでしょー。 |
ちがう! 余は嘆いておるのだ、貴様らの罪深さに。食いものが溢れてい
るからといってそれが天の恵みであることも忘れ、あまつさえバイキング
などといった贅に浮かれてただむさぼり喰らっている貴様の愚かさに! |
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むさぼり喰ってないっつーの。 |
黙れ! では祈りをささげておるか? 神がどーして食いものを恵んで下
さっておるのか、少しでも考えたことがあるのかっ!? |
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い、いやまあ、そういうのはあまりしてないけど、でもお米は八八回噛ん
で食べろとは言われてる。 |
噛んでおるのか? |
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噛まないわよ。おかゆ通り越して糊になっちゃうでしょーが。 |
ほれみろ! 結局はこうなのだ。貴様らは神はおろか、お百姓様へも感謝
せん。畢竟するに生きていくうえで最も尊ぶべき感謝の心というものが圧
倒的に欠如しておる! だからテレビなど見ながらポテチ食べて平気でい
られるのだ。それでは何も考えずにただ草を食む畜生と変わらんではない
か! |
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……ちょっとポテチ食べただけで、そーまで言われるとは思わなかったわ。
なに、アンタとこはそんなに食べモノに厳しいの? 仮にポテチ一袋全部
食べちゃってたらわたし、どーなってたわけ? |
百叩きは免れん。他のなにを赦したとして、我が神はそういう無駄には厳
格だ。 |
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食べても無駄なんだ。んまあ、脂肪は贅肉とも言うしね、まあいいわ。
じゃあ残すのはどうなの? お料理したはいいけど、食べきれないときっ
てあるでしょ? |
残すだと? そんな発想はない。
仮にそのようなことがあったとして、
考えるだに恐ろしい罰が待っておる。 |
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あのね、これはわたしのコトじゃなくて興味本位で聞くんだけど、例えば
ソフトクリームのコーンを捨てるのは? ビ○クリマンチョコのシールだ
け取ってチョコは捨てちゃうとか、一体どーなっちゃうの? |
そいつとアルマゲドンだ。燃え盛る神の瞋恚が大地を焼き、海を沸かせ、
やがて世界は終焉を迎えるであろう。 |
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……そりゃ大変だ。これから食いものは、絶対に残すわけにいかないな。 |
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ホントよね。そのうえ少し食べたら大食なンだからね、もうどうしていい
のやら。 |
ふん。神の御心ははかり知れんのだ。我らはただ従うのみ。さもなくば光
は消え、進むべき道は暗澹たる迷妄に鎖される。ゆめゆめ忘れぬことだ。
さ、いかに暗愚な貴様とて、もうワカったであろ? では償うがいい、貴
様の犯した大食の罪を。 |
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はいはい。ポテチは償ったから、それじゃ次はケーキとバイキングかしら
ね。ええと、できればそれもおだんごで贖いたいけど、いいかしら。 |
ダァメだ! ポテチならいざ知らず、ハンバーグだのエビフライだのが出
てきてはとても釣り合わん。もっといいものを持ってこんとな。 |
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じゃあ酢コンブもつけるわ。これでいい? |
たわけ。もし貴様がホテルディナーの極旨ハンバーグを持っていて、それ
を酢コンブと交換しろと言われたらするか? するわけがなかろう? 人
に聞く前によく考えてみるがいい。 |
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考えれば考えるほど納得いかないンですけどねー。
でも、そしたらどー
しよ。他にあげられるものないしなァ……。 |
そうかや? 余には貴様がまだ、懐に何か隠しているように見えるがの。 |
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ぁえっ、ふところっ!? なんだろ、罪かな? 罪はね、そおね、えと他
には…… |
とぼけても無駄だ。余は神の子だぞ? ごまかせるなどと思うなよ? |
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む、本当だ。なにかいー匂いがする。これは……サクラモチ! |
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くっ。 ……なんて目ざといの。これはわたしのよ。さっきよーやく買え
たんだから。あげないわ! |
貴様、この期に及んでまだ罪を重ねる気か? いくら寛大な我が神とてこ
れ以上の宥恕は罷り通らぬぞ! |
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だってこれ、道明寺! こないだはユーキちゃんに食べられちゃった…… |
いーから早くよこさぬかーーーっ! |
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あっ!? ……あう~~、わたしのサクラモチぃ。おウチでテレビ見なが
ら食べようと思ってたのに、ひどい~…… |
何を言う。これは貴様のためだ。本来なら重罪に問われる許されざるべき
行為を未然に防いでやったのだ。感謝せよ。
……はむっ。んむ……これは、うまいな。モチといい餡といい、実に罪深
き味だ。貴様は平素からこんなものばかり食べておるのか? |
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食べてないわよぅ。いっつも誰かに取られちゃうのよぅ……。 |
ふっはははは! 天網恢々疎にして漏らさずだな。どうやら我が神はちゃ
んと貴様の罪を見届けておられたと見える。
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ホントよ。なんだかそんな気がしてきた。
ね、司祭様、お願いですから
一個だけでも返して。サクラコなのにサクラモチを食べられないなんて、
そんなみっともないことないンです。 |
言っている意味がわからん。 |
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なんて言うのかな、コロ介がコロッケたべないってゆーか、カレーを食べ
ないイエローみたいな? とにかくそーいうのはダメなのよ~。 |
……いや、わかんねーよ。 |
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というわけで陰陽師でした~。
コノンちゃんたら厳しくてね、あれから
一個も返してくれないのよ? 結局十二個全部食べちゃって、まだ何か
ないのかや? なんて言ってるの。あれなら世界が終らないで済むとは
思うけど、明らかに大食よね。あんなちっさいクセして、どこ消えてく
のかしら。 |
身体が小さくても胃が長いとたくさん入ると聞いたぞ。 |
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だからそれは罪じゃないのかってハナシよ。まあいいわ。それじゃ今日
はこのへんで。
なんだかいつでも腹ペコなコノンちゃんが、傍若無人な
教えを説いて回る「トラブル☆ウィッチーズねぉ!」は、Xbox360 Live
アーケードにて今冬配信予定です! |
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は~、放プレのあおいちゃんに、ムリダナ~って言ってみたい。 |
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