ヨーコ・レッドスターのちょっとフツーぢゃない話!

第五話

ヨーコ

皆さんこんにちは、こんばんは、おはようございます!
今週もまたはじまります「ちょっとフツーじゃないハナシ」、これが広報になっているのかどうかはともかく司会はわたくし、ヨーコ・レッドスターがいつものとおり、ちろっとお送りいたします!  

おはようございます。マイケルです。
ねえねえヨーコ、今日はアレやらないの? あのなんかちょっとおかしな挨拶。

マイケル
ヨーコ

あ、忘れてた! よれちょふなはー……って、いひひ、もう遅いか。

そうだね。そういうのはタイミングがただただ大事だからね。
っていうか、司会がそれ忘れちゃってるっていうのもどうかと思うけど。

マイケル
ヨーコ

そおなんだけど、う~ん……実は中間テストが近づいておりまして。少し頭の中がパンク気味と言いますか、今日の数学の小テストの点数が気になったというか。

何点だったの?

マイケル
ヨーコ

それがもう、見るも無残なものでして。今日はママに怒られちゃうかなーと思うと、少し気が滅入りますねぇ。

そっか。じゃあ今日の晩ご飯でハンバーグは出ないな……。

マイケル
ヨーコ

他の教科はだいたいよき点なのに、なぜ数学だけがダメなのか。そんな設定、私には無用だと思うんだけどなあ。

どこに申し立てすればいいのやら。
ところでヨーコ、今日のゲストは誰かな? あれ、あそこで眠そうにしてる人?

マイケル

ふわーーーーーーーーーーーぅ、むにゅむにゅ……

シンフィー
ヨーコ

はい、今日のゲストはシンフィーさん!
地上のどこかにあるという妖精の国の女王様……って、あれ、私のとこに来るの? え、だっこ? これどういう感じ?

マイケル

ヨーコの膝が気に入ったのかな?

くあ……むにゃむにゃ……えへへ、寝ていい? なんかもう、くたびれちゃった。

シンフィー
ヨーコ

う……ひどくかわいい! なんだこれ!

マイケル

ネコみたいな人だな。

こぉらーーーーじょうおうぅううう~~~~っ!

ポンタ

ぎゃふ!?

シンフィー
ヨーコ

え、なになにっ!? 未知の生命体!?

マイケル

妖怪ゾーガシラ!?

ひいいい、かかかかくまってぇ!

シンフィー
ヨーコ

え、どこに……って、ちょちょ……シャツの中はムリじゃない???

むぎゅうう~~~~~なんか大きいのがあるぅ……

シンフィー

隠れても無駄だぞ女王! こら、人間に懐くな!

ポンタ
マイケル

なーおいキミさ、やめろよ。この人怖がってるじゃないか。

あ? なんだおまえは。部外者は口を挟まないでもらおう。

ポンタ
ヨーコ

なんだかえらく高圧的な態度ですねー。あなたこそ何者? シンフィーちゃん、怯えてますよ?

ちゃん、じゃない、様だろ! この下賤の人間風情が、太古の昔より地上を統べる妖精族が女王シンフィー・ポーラットをちゃん呼ばわりするなど、極刑に処されてまだ足らん大罪だぞ!

ポンタ
マイケル

おまえこそ口を慎め。ヨーコはボクの主人だぞ。なンかしようってんなら口を挟むだけじゃ済まなくなるからな!

ヨーコ

そおよ! こんな幼気な子をどうするつもり? こんなに怯えさせるなんて、アンタよっぽど悪いやつなんじゃないの!?

悪いやつだって? ふん、ばかめ。僕は女王のお目付けだ。いつ何時もお側に仕え、何くれと構いつける忠実なしもべってやつだよ。
それにな、女王は怖がってなんかいない。よく見てみるんだ。女王が本当に怯えてるかどうか、その目でちゃーーーんと確かめてみるがいい!

ポンタ
ヨーコ

え? 

……くーくー……ぐーーーーーー。

シンフィー
マイケル

あれ、寝てる? しかもエライやすらかな顔だ……。

ヨーコ

ちょ、ちょっとシンフィーちゃん? シャツ伸びちゃう

どあっはっはっは! 見ろ、僕の言ったとおりだ。人間などを前にして怯えなどするものか。女王は偉大なんだ。
あとそれもう起きないからな。僕がどうにかしない限りはね!

ポンタ
ヨーコ

え、そおなの? シンフィーちゃん? あれ、ちょっと起きようよ、シンフィーちゃん! もしも~し!?

んにゅう~~……えへえへ、くーくー、みゅう~~……

シンフィー
マイケル

……人っていうか、これはもうほとんどネコだな。

閑話休題(鳥のイラスト)
ヨーコ

はい、それでは仕切り直しと参りましょう! 本日のゲストは妖精の国の眠れる女王、シンフィーちゃんです!

にゃあおお~~~~ん! シンフィーでげす。

シンフィー
マイケル

でげす?

女王のお言葉遣いは少々独特なのだ。
それとおまえ、ちゃんじゃないと言ったろ!

ポンタ

ふぁ~~~、よきにはからえ。

シンフィー

御意。

ポンタ
マイケル

おまえ、ホントに忠実なんだな。

あたりまえでしょ。女王だぞ女王。キミは違うのか?

ポンタ
マイケル

ヨーコは女王じゃないし。

ヨーコ

で、シンフィーちゃんは、どうして追われてたんです? このゾウのコに。

きゅーんきゅーん……みゅーみゅー……(撫でて欲しそうな眼)

シンフィー
ヨーコ

ううっ、なんて可愛いんだろう……撫でずにはいられない……

それはなにかをうやむやにしようとしてるんだ。いつもの手さ。それとゾウのコってなんだ。

ポンタ

うやむやにしようとだなんて。わたしは別に、悪いことしてません。ここに呼ばれたから、来てみただけです。

シンフィー
ヨーコ

うんうん、そうよね。今日のゲストだもん。私たちがお呼びしたのよ?

マイケル

遠くからお越しくださいまして。ありがとうございます。

だからそれがダメだと言ってンだァ。あんたは人間の見世物じゃない、妖精の女王だ!
あれほどダメだと言っておいたのにお城を抜け出すなんて。
ほらもう帰りますよ女王様。いつまでも人間に懐いてなんかいないで……

ポンタ

やだ。

シンフィー

ヤダじゃないんだよお! アンタ女王だろうがよお!
万物の長たる妖精族の頂点がよお、人間の凡俗の小娘の貧相な膝の上で抱っこされながらナゼナゼされてるなんてほかの連中に知れたら鬼ヤベーだろうがよお!

ポンタ
ヨーコ

あーーー、ひどい! 貧相ってなによ!

マイケル

こいつ口悪いよなあ。

別に長でも頂点でもありません。わたしたちはただの妖精。
森羅万象の調和を保つものにして、人間たちの良き隣人です。今日はそれを伝えようと思ってきたのです!

シンフィー

おんめその人にそっだら懐いたままなにしゃべろうってんだこの! あだすはネゴってか? 妖精はペットだってが!?
だーがらおめさタダのネゴだって言われンだべが!

ポンタ

にゃうあー、それ言うんでねーよぉ、ネゴはダメってゆったでねーがぁ! 

シンフィー
マイケル

……確かに独特だな。

ヨーコ

あ、ま、まあまあお二人とも。なんかいろいろと事情があるのかもだけど、でももう来ちゃったんだし、来ちゃったからには楽しくお話ししようよ、ね、そちらの……えーと、ゾウくん……

ゾウじゃない、ポンタだ! もう一度それ言ったら女王す巻きにして引きずって帰るからな、注意しろ。

ポンタ
マイケル

横柄というか無礼というか。

ヨーコ

ああ、ごめんごめん! 注意するわ、ポンタ君。ね、シンフィーちゃんは……

ぐーーーーーーーーーーーーー

シンフィー
ヨーコ

ねてる! あ、ちょっとほら、シンフィーちゃん! ほら起きて……ね、これじゃ全然進まないから……

……耳の裏をちょいちょいッとくすぐる。

ポンタ
ヨーコ

え、みみ? ちょいちょいって、こうかな?

んみゃ! ……にへへ、おはようございます。

シンフィー
ヨーコ

おお~~、こうかてきめん!

マイケル

忠実な臣下ってのはホントみたいだな。

ヨーコ

うんうん、二人ともね、もっと仲良くしてもらうために、ちょっと甘いものでも食べましょうかね。
こんなこともあろうかと、いつも持ち歩いているのです。はいこれ、チロリチョコ。ちろっと食べて仲直り。

にゃわわ、ありがとう! ……にゅあ~~ん、甘いですぅ! おいしい……

シンフィー

……む、悪くはない味だ。人間の糧にしてはな。

ポンタ
マイケル

ボクにもおくれよ!

ヨーコ

もちろんよ。はい、マイケル。

マイケル

うわあ~、ありがとう! ……むぐむぐ、あめえ~、おいしい~! ボク、チョコ大好きだ。

ええ、ホントに。お菓子、とってもおいしいですわ。

シンフィー

……嫌いじゃない。

ポンタ
ヨーコ

舞か……って、それはいいとしてシンフィーちゃん。 シンフィーちゃんは今日、どこから来たのかな。

……くれろ?

シンフィー
ヨーコ

え、なんて?

チョコをも一つよこせとの仰せだ。速やかに渡されたし。

ポンタ
ヨーコ

ああ、これね。はいはい、どうぞ、シンフィーちゃん。

わあ、うれしい! にゃふにゃふ……むぐむぐ……
……その問いにはふつう答えないのですが、でも今日は特別です。わたしたちは妖精の国から来たのでふ……

シンフィー
ヨーコ

妖精の国? それはどこにあるの?

あっちのほう。ヒルビコットの丘を越えた森の中。

シンフィー
マイケル

え、ヒルビコット? そっちのほうは知ってるけど、国なんてあったか?

おまえたちには見えないように結界で守られてる。薄汚い人間どもに踏み荒らされないよう、厳重にね。

ポンタ
ヨーコ

薄汚いって、私も含まれるのかな。 

ほれポンタ、失礼こぐでねーの。

シンフィー

御意。

ポンタ
マイケル

女王ってよりは、田舎のばあちゃんみたいと言っては無礼だろうか。

ヨーコ

とにかくあなたたちのおうちはそっちにあるのね。ヒルビコットって、あの森とか草原しかないところよねえ。
ね、妖精の国ってどんなとこなの?

キレイなところです。

シンフィー

ゴミがない。

ポンタ

時間の流れが緩やか。

シンフィー

勉強も仕事もしなくていいからな。

ポンタ

朝は寝床でぐーぐー。

シンフィー

学校も試験もなんにもない。

ポンタ

起きたらおかし食べてればいい……

シンフィー
ヨーコ

数学は?

なんだそれは。食い物か?

ポンタ

ふぁー……ぐーーーーーーーーーーーーー

シンフィー

あ、起きろ! 油断もスキもあったもんじゃねーな!

ポンタ
マイケル

おばけの世界の住人じゃねーか。

ヨーコ

えー、いいなあ。学校はともかく、数学も試験もないなんて夢みたい。
試験なんてね、ある一定の点数以下は蹴落とされるってシステム、ホント世知辛くてイヤよねぇ。

そういう争いごとみたいなのは一切ないです。みんな仲良く平和に寝て暮らしている……

シンフィー

女王だけだけどな、一日20時間も寝てるの。

ポンタ

これポンタ。

シンフィー

御意

ポンタ
ヨーコ

んっふふ、よっぽどいいとこなんだね、妖精の国って。でも知らなかったなあ、まさかエイヘムランドにあったなんて。みんなは知ってるのかな。

いいえ、ほとんど知られていないと思います。妖精の国はもちろん、私たちがこうして確かに存在してることも、あんまり。

シンフィー
ヨーコ

あれ、そうなんだ。妖精の国の場所はともかく、あなたたち妖精がちゃんといるってことは私、わりと昔から知ってたよ。
だっておばあちゃんが見たって言ってたし、私も小さいときに一度だけ。だからあんまり驚きもない。

……僕のこと、未知の生命体とか言ってなかったか?

ポンタ

んふふ、そうなんですね。そういうこともあるかと思います。エイヘムランドは魔法使いがたくさんですからね、そういう人たちと仲良くなってる妖精もいますよ。
おばあちゃんて、魔女だったのではないですか?

シンフィー
ヨーコ

ううん、魔女だったのはひいおばあちゃん。おばあちゃんにはあんまり才能がなくて、それで魔法協会の事務員をやってたの。
その時にはお城の中にもたくさん、妖精がいたって。

マイケル

でもママとパパは見たことないって、言ってるよね。妖精だなんて、信じてもいなかったし。

いるんだよそういう無礼なやつ。実際に見えるものしか理解しないっていうか、まったく嘆かわしい!

ポンタ
ヨーコ

まあ、ママたちは超がつく現実主義だからね。さもありなんだよね。でも私もお城に行ったことは何度かあるけど、確かに見たことないなあ。

人間の城など砂山に等しい。そんな場所に興味はないからな。

ポンタ
マイケル

おまえだって大概無礼だ!

……砂山好きだけど。

シンフィー

御意。

ポンタ
ヨーコ

んふふ、でもこうしてまた会えてうれしいな。ホント、何年振りかなあ。 

妖精を、どこで見たんでしょおねえ。

シンフィー
ヨーコ

お庭だよ。シャベルを探してたら木の後ろからしっぽが見えてね、なにかなって思って覗いたらネコちゃんみたいなのが寝てたの。まだちっちゃいときだったけど、はっきり覚えてるよ!

ネコ? 寝てた?

ポンタ

なしてこっちを見るの。

シンフィー
ヨーコ

白っぽくてふわっとしてて、しっぽの先にはベルがついてた。で、それをちょっと触ったらチリーンと音がしてネコちゃん飛び起きたわ。目をぱちくりさせててね、驚いてたんだと思うけど次の瞬間、魔法の杖みたいなのが現れて、それをパッと振ったら、みえ~~~~って言って消えちゃった。あとでおばあちゃんに話したら、それは妖精だって。魔法を使ったのなら、もしかしたら王様かもしれないって……

ヨーコ

んふふ、案外シンフィーちゃんだったりして。

……おい、ベルって、これじゃないのか?

ポンタ

ぐ、ぐう~~~……ぐみゅ、ぐ、ぐみゅう~~~……

シンフィー
マイケル

それがタヌキ寝入りだってことは、ボクにもわかる。

と、時は悠久なれど万物は流転の理に逆らえなどしない。すべては移ろい、変化し、別のものへと生まれ変わってゆくが必定というもの。つまりそんな昔のことは覚えていません……

シンフィー

ですがもし妖精と会ったというのなら、あなたは恐らく魔法の祝福を受けているのでしょう。
魔法の源は万物のスファル。世にあまねく全てのものが放つ生命の息吹。それらを束ねて統べる、偉大な魔女となるやも知れません。

シンフィー
ヨーコ

えっ、うそ! 魔女になる!?

本当ですよ。わたしたち妖精というのは、そういう人としか出会えないんです。今日、こうしてお会いしてるのも含めてね、これは世界が生まれた時から定められていた運命なの。だからってどうということもないのですけど。

シンフィー
ヨーコ

どうということもないんだ。

はい、ありません。すべてはただの事象です。
世界を形作る真理はまだ見えないけれど、いずれすべてが解き明かされるのだとして、そこには特別な意義なんて、なに一つないことがわかるだけのはず。
でもだからこそあなたが必要なのです。その無に意味を与え、有に変えられる唯一の存在。
それがわたしであり、あなたたち魔女かもしれません。

シンフィー

世界がなぜ、妖精や魔法を作ったのか、という話だ。

ポンタ
ヨーコ

無を有に変える……なんだかとても難しいですねえ。

……ぐーーーーーーーーーーーーー

シンフィー
ヨーコ

あ、寝た!

みみ、みみ!

ポンタ
ヨーコ

ちょいちょいっと……

にゃうっ……にへへへ、そう、ホントに難しいんです。自分で言ってて眠くなってきちゃいましたあ。

シンフィー
マイケル

哲学ってやつだな。

そう。わたしたちはただ、受け入れるだけ。決して流れに逆らわず、ただあるがまま、時の望むがまま……でももう少し、チョコ食べたい……。

シンフィー
ヨーコ

あげるよ。はい、チョコ。妖精さんは甘いものが好きなのね。

んみゃああ~~、ありがとう! んにゃんにゃ……あま~い!

シンフィー

餌付けされとる。

ポンタ

……ぐーーーー、すぴーーー、んにゃんにゅあ……

シンフィー
マイケル

食べながら寝てる!

……しっぽのベルを弾くんだ。

ポンタ
ヨーコ

え、弾くって、こう?

……ふにゃあっ!? あ、あれ? なした……?

シンフィー
ヨーコ

……というわけで、ヨーコ・レッドスターがちろっとお送りしましたちょっとフツーじゃないハナシ、今週はこのへんで!

マイケル

ヨーコが昔見た妖精っていうのは結局、シンフィーだったのか?

ヨーコ

シンフィーちゃんは違うって言ってたけど、どうなんだろうね。しっぽのベル鳴らしたら飛び起きたしねえ。

マイケル

ポンタはやたらと人間を敵視してるし、妖精ってなんだかよくわかんないや。

ヨーコ

いろんな理由があるんだろうけど、それは本編でのお楽しみ。

マイケル

あれはどうしたんだよ。

ヨーコ

あ、また忘れてた! よれちょふなは~……
……って、あ~あ、私も今日ばっかりはおうちじゃなくて、妖精の国に帰りたい。

本日のおまとめとニュース

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