みなさんこんにちは~! 毎度おなじみよれちょふなのお時間がやってきました。人生楽あれば苦ありと言いますが、いまがその後ろのほうだったかどうかはともかく司会は相変わらず元気が有り余っているわたくしヨーコ・レッドスターでお送りさせて頂きます!
補佐のマイケルです、こんにちは。いやあヨーコ、今日もホントに元気だねえ。
元気だよ~。最近は特に悩むこともないしあったかくなってきたし、来週から新学期も始まってまたお友達と会えると思うと楽しくなってくるよね!
さてね、そういうもんかね。ボクは基本、個人主義なんでわかんない。でもまあ、あったかくなってきて陽も伸びてきて、なんだか気分がウキウキするっていうのはわかる。
ホントよね。いつの間にかお花も咲いてるし春は私、大好きよ。あ、でも一つだけ困ったことがあってね、それはなんだと思う?
え、なんだろ。この春、高校生になったばかりのヨーコが二度目の春を迎えたのに、まだ高校一年生だってコト?
こおらぁ~~、それはゆうなーーーーーーーーっ! 設定よ設定! 別に私、落第したんじゃないからね。
ってゆうかそんなんじゃないし、もっと重要なことヨ。私の毎日に暗い影を落としかねない大問題。
大問題? その設定破たんよりも重要なこと?
破たんてゆーな破たんて。私は永遠の高1なの。ってゆーかそれはもう忘れて。真面目に考えて!
え、数学関連?
ちっがうわ! まあそっちも問題だけどね、でもちっがうわ!
わっかんねーよもう。降参でーす。
またそんな投げやりなこと言って。お魚よおさかな。お魚は寒い時期のほうが脂がのってて美味しいんだって、昨日さんざん話したじゃん。
どうしてそんな重要なこと忘れてんのよ。
どーでもいいからだよ! つーか続いてたのかよそのハナシ!
どうでもよくないし。私にとっては焼いたお魚を食べることが朝一番最初に訪れる幸せなのよ?
タラとかカレイとかはもちろん、ニベの塩焼きが食べられなくなるって言うのはちょっとどころじゃなくユウウツよ。
サバとも10月までお別れだし、なによりアラの煮つけが来年まで食べられないなんて……
はいはい。さかなの話はそこまで。みんなワケわかんなくて白目向いてるよ。もっと他に言うことあるでしょ。
うおォん、そうだった!
……おまえちょっとキャラ変わってね?
変わってないわ。ただちょっとうれしいだけ。なんせ久しぶりなんだもの、ここに来たの!
だよなあ。魔女たくさん集めて盛り上がったのに、しばらくお休みとか言われて。そんですっかり忘れてたらまた急に声がかかってさ。なんかちょっと勝手だよなあ。
そゆこと言わないの。私はこのコーナー好きだったしまた始まってみんなに会えるんだからそれでいいじゃん。
アンタだってホントはそうなんでしょ? 忘れてたなんて言ってるけど、いつまでほっとくんだって、けっこう怒ってたもんね。
おまえもゆーな、そうゆうこと! ボクが忘れてたって言ったら忘れてたんだっ!
んふふ、素直じゃないわよね、ホント……
そういうわけで「ヨーコ・レッドスターのちょっとフツーじゃないハナシ」略して「よれちょふなは」は今日からまた始まります。
長らくお休みを頂いており、本当に誠に大変失礼致しました!
ちょっとした事情で休止しちゃうような弱小コーナーではありますけど、楽しみにされていた方もきっといたんじゃないかと希望的に観測するたびに胸がちくちくしたおよそ3カ月間でしたが、このたび満を持して大復活!
これまで以上に特ダネ特盛で行ってみたいと思います!
で、そろそろ呼んだ方がいいよ、今日のゲスト。待たせすぎだろ。
おおう、そうだった! 久しぶりなのでまだ本調子じゃないみたいです。
さて今日のゲストはこのお方!
東乃国のナイシンノーにして強大無比な力を持つ陰陽師の頂点。
フミノイミキ・コザクラちゃん!
おっす。
あれ、前回で書初めの品評をしてくれた人だよね?
ほうじゃ。あれから4ヶ月くらい、ここで待っとった。
えっ!?
うそぉ!?
うそじゃ。きにすんな。
んな、なんだよこの人……そんな真顔で嘘つくなよ。
な、なんか陰陽師って神秘的だからね、なんでもあり得るように思えちゃうよね。
ほんとは昨日、列車で来た。前回に続いて二度目じゃ。我が国にはないもんでの、飛ぶより早いし、何度乗っても楽しいの。
そうなのね、ないんだ。私も列車には詳しくないからわからないけど、でもそれならこの列車、東乃国にも続いてるってことじゃないのかしら?
ちゃう。列車に乗るんはもちっと別のところからじゃ。そこまでは馬車で来る。東乃国は遠いからの、けっこうな長旅じゃ。
いやあ、本当にありがとうね、そんな遠いところからきてくれて。でもコザクラちゃん、誰と来たの? もしかして一人?
おつきのお姉さまとじゃ。それとうるさいキリン。
キリン?
ほうじゃ。あずき色なんでそのまま「あずき」と呼んでおる。
わしのお目付けとかぬかしよるがの、ホントは独りだと退屈なだけじゃ。そのうえただただ時間にうるさい。予定もないのに10分おきに時刻を告げよる。ついて来んでええのに、きよったわ。
お目付けだって。あんたとおんなじこと言ってる。
ボクは別に時間なんて気にしてない。
だから物入れに閉じ込めておる。あそこじゃ。お姉さまが上に座っとるアレ。
あ、手を振ってるあのひと? あれがお姉さま?
つうかトランクじゃん。だいじょぶなのか?
平気じゃ。あずきはあずきでああいうことが嫌いじゃないのじゃ。痛いとか苦しいとか、そういうことに目がない性分での。
目がないって、マゾかなにかか?
なんかますますわかんないわよね。
わしにもようわからん。時にそち、なんかわしに用があるんじゃろ?
だからはるばるやってきたんじゃが、そんならそろそろ本題に入ろうかの。
あ、本題ね! そうそう本題よ……。
ヨーコはいつも前置きが長いんだ。
前置きとな。まあ、さかなのことならわしもおおむね同意見じゃがの。
しかし春には春の、夏には夏の魚がおって、旨いのがいるのも事実じゃ。
あ、そうよね! 特にアジなんてさ、夏のほうが美味しいもんね。干物にして一年中食べられるんで、あんまり知られてないんだけど。
マナガツオもキスも美味じゃ。それにホッケも出てくる。それを思えば、暖かい季節も捨てたもんじゃないの。
そうだよね。で、その夏が終わる頃にはサンマも秋ジャケもくるし、そうこうしているうちにまた冬が来てお魚が美味しくなる!
その前に戻りガツオじゃの。たたきがうまい。
私はハタハタが楽しみ! サゴハチ漬けをあぶって食べるのがもう幸せで幸せで……
いつまでさかなのハナシを引きずるんだ。
それとも今日の本題って、まさかそういうかんじ? 美味しい食べ方から仲卸の小売相場までわかっちゃうとか?
違うけどぉ。でも陰陽師が魚好きってことはわかった。私と同じなんて、意外だわ。
東乃国もずっと海沿いじゃからの、漁業が盛んなのも魚が旨いのも、ここと同じじゃな……
……して、違うとなると本題はなんじゃな? わしに訊きたいことがあると聞いたがの。
ふふん、それはズバリ! あなたたちのことです!
陰陽師ってなんなのか、魔女とは違うのか、そのあたりってよくわかんないでしょう? それを少しでも教えてもらいたくて今日は来ていただいたと、そういうわけなのです!
確かにわかんないよな。魔女ってのは魔法を使うから魔女なわけで、じゃあ陰陽師ってなにをする人たちなんだ?
陰陽道の秘術じゃな。
陰陽というのは天地神明のコトワリに基づく思想や知識から発展した大系的な技術の総称での、源を天の気とする神秘の力を自在に操り、あらゆることを可能にする呪術や占術の行使並びに管理をしているのが、我々陰陽師であると言うわけじゃ。
源を天の気ねえ……
呪術や占術……それって魔法と違うの?
同じじゃ、根本的にはな。ただやりかたや解釈が違うだけで、実際やってることにも効験(こうげん)にも大した違いはない。
おぬしらの術とて、なんらかの気を源として力を練り上げてるのじゃろ。確かスファルとか言ったか……
そうね、スファルよ。万物に宿っている気と力。じゃあその天の気っていうのもつまり、スファルってことなのかな?
ほうじゃの。わしら陰陽師は常に天と星から気を授かり、それを力に換えておる。
といっても科学者ではないからスファルとおんなじかどうかは判然せんがの、常人には感知できぬそれを感知し、自由自在に操る術という点では、陰陽道と魔法は同じものと言ってよかろう。
へえ~、そうだったんだね~。そうすると私が東乃国へ行ったら、陰陽師ってことにもなるのかな。
側面的にはそうじゃろうの。おぬしからはただならん素質を感じるし、実際うまくやるじゃろう。
ただ方法や解釈の違いの壁は決して低くはないからの、いっぱしの陰陽師を名乗るには、相応の努力も必要じゃろうな。
やっぱりおべんきょうかあ~。難しいんだろうなあ~。
戦車乗りと戦闘機乗りの違いじゃ。戦いに勝つという目的はおんなじでも、入れ替わることは難しい。
でも魔法の用途は戦いだけじゃないし、陰陽道だってそうだろ?
東乃国じゃなにもかも、陰陽師が仕切ってるって聞いたことがあるよ。
そうじゃがの……しかし陰陽師と言ったら戦いじゃ。政治や学問をやっとる連中は陰陽師にして陰陽師にあらず。
言葉と常識で回っとる分野に、天の気はむしろ必要ない……というのがわしの持論じゃ。
あ、まあそうよね。議論に必要なのは言葉だし、魔法のお勉強するのにだって、ふつー魔法は使わないわ。
数学がわかるようになる魔法ってないの?
ない。っていうかあったらとっくに覚えてる。
算道はわしも苦手じゃ。陰陽の秘術が通用せんからの。
ほんとよねー。あ、それと東乃国はアニメとかゲームとかも盛んなのよね。
一見、お堅い国のように思うけど、実は大昔からそういうコンテンツ大国で、オタクの人たちがたくさんいるとか。
ほうなのじゃ。我が民草は創意工夫が得意での、他の国では類を見ない独特のコンテンツ産業が主要な文化の一つとして形成されておる。
オタクというものの定義はわしにはわからんが、しかし熱狂的なファンというかマニアというか、その手の者たちは朝廷にもたくさんおっての。
ほかならぬお姉さまもそうだし、九条の一族にはなんやら甚だすごいのがおる。
甚だ? すごいオタクってことかしら。
魔砲少女となった自身のドキドキ設定資料集とやらを見せられたが、なんやらわけがわからんかった。
陰陽師としては出色の有能ぶりじゃが、時おりにわけのわからんセリフを言ってみたり妙な服装で歩いてみたりでの、なんともつかみどろのないやつじゃ。
コスプレってヤツかな。
そうね。案外ふつうだった。
でもそれなら陰陽師っていつもはなにしてるの? 天の気を使わなきゃいけないようなお仕事が見えないんだけど。
だから戦いじゃ。日夜妖異と戦っておる。そうして民草を守るのがわしらの仕事じゃ。
ようい!
……ってなに?
妖異とはケガレじゃ。人の意識が為す悪意が天の気を変容させてケガレとなり、あらゆるものに害をなす。
東乃国の地下にはどういうわけか霊脈が張り巡っておってな、そういうものの現出が他国の比では無く、陰陽道の発展はそこに由って来たる必然だったというわけじゃな。
なるほど、そういうことだったのね。それなら陰陽師の力がいつも、やたらに強いっていうことにも合点がいくわね。
時に強大となるそれを速やかに狩って浄化し、世の寧静(ねいせい)を護持(ごじ)するが陰陽師の務めにして偉大なる力。
天地開闢(かいびゃく)の往昔(おうせき)より王都を守ってきたのはつまり、ワシらなんじゃな。
うんうん、それってつまり、陰陽師はもともと魔物ハンターだったってことだよね! すごい! かっこよくない??
かっこ? いいかのぉ。わりと必死なんじゃが。
かっこいいわよ! こっちだってなんかの拍子に悪魔が出てくれば魔法管制官(サヴェンダ)って言うのが来るんだけどね、要するに陰陽師ってそれとおんなじってことじゃん。
つまり最強の魔女ってことよね?
ふーむ、わしに斬れんモノなんぞ確かにないがの、ちっとアレルギーがあるし、戦っている間は鼻水が止まらん。
お姉さまが拭いてくれるからなんとかなるが、カッコいいかというとようわからんな。
アレルギーって、花粉かなんか?
ケガレじゃ。斬って叩いてほこりが立つと必ずくしゃみが出よる。
わしのは大音声じゃからの、勝利の余韻もへったくれもないわ。
んっふふ、それは確かにちょっとおかしいね。かわいいけど。
でも斬るって、どうやるの? その腰のところにある、それは剣?
お察しの通りじゃ。これは斬魔刀で名を桜襲(さくらがさね)という。
何億年もの昔に天より降ってきた特殊な鉱石で造られておっての、この世のものではない神威の宿る霜剣の中の霜剣じゃ。
特殊な鉱石……もうちょっとよく見せて。
興味があるなら、ちょいと持ってみるかの。
え、いいの?
おぬしならえかろ。ほれ。
うわあ~~、すごい! っていうかぜんぜん重くない!
ねえほら、この刃のところ……ギラギラしてるけど銀でも黒でもなくなんかいろんな模様にも見える……こんなの見たことない!
あ、あぶねえよ、ヨーコ……ケガする前に返しなよ。
平気よ。なんかね、すっごい強くなった気がする。
確かになんか不思議な力があるねこの剣……いつまでも見てたいというか、なんか、引き込まれるというか……
実際に引き込まれておる。ほれ、もうえかろ、返すがよい。
あ、うん……はい、どうぞ。
んむ。
………………あれ、なんだろ……。
……ヨーコ?
気を取られたんじゃ。桜襲にの。こいつと一体になるところであった。さすがは魔女じゃの。
……え、魔女? ですって?
この剣は持つ者の気を欲する。力ある者の才幹に憑りついて縦横無尽の力を引き出し、どんな妖魔をも滅するのじゃ。
しかしそれができるのは相応の資質と力を持つ者だけ。一般人が持ったところでさしみ包丁とそう変わらん。
ということはつまり、私にはやっぱり、陰陽師の資質があるってコト?
そういうことになるの。桜襲と一体になれる者など、朝廷にもそうはおらん。大した才覚じゃな。
わわ、マイケル聞いた? 私やっぱり才能あるんだよ!
でも陰陽師にもなれるなんて思っても見なかった……え、どうしよう……お母さんになんて言おうかな。
ムリに決まってるだろ。魚捌くのにだっていちいち尻込みしてるおまえが刀振り回すなんてさ。
あ、まあ確かにそうだよね。あの眼がね、なんというか恨めしくてどうにも気が引けちゃうんだよね……。
なにごとも慣れじゃからの、心配には及ばん。
どうじゃろうおぬし、わしと一緒に一度、東乃国へ来てみては。なに、外国出身の陰陽師だっているし人種は実のところあまり関係ない。
コザクラちゃんに誘われるなんて光栄だけど、でも私がなりたいのは魔女だからなあ……
こことおなじ海辺だし、魚もうまいが。
それをね、言われるとどうしてもゆらぐよね……
揺らぐか?
陰陽師の力は強大じゃがの、しかしそのゆえに頭数がちっとも足らんくて後進誘掖もままならんうえに激務なんじゃよ。手伝ってはくれんじゃろか?
ぎょ、まさかの人材不足だった!
どこもせちがらいねえ。
……というわけで、ヨーコ・レッドスターがお送りしましたちょっとフツーじゃないハナシ、今週はこのへんで!
コザクラのやつ、なんだか切実のようにも見えたけど、断っちゃってだいじょぶだった?
だいじょぶもなにも、務まらないわよ。ほとんど毎日、なんかと戦ってないといけないなんてフツー無理でしょ。
そのフツーじゃない仕事をしたいんだってヨーコ、言ってなかったっけ?
い、言ったけど……でもその前にリュフヤベルクに行かなきゃね。
誰の机の上だろうか???▶