皆さんこんにちは、こんばんは、おはようございます!
今週もまたはじまります「よれちょふなは」、二週間ぶりの通常運転なわけですけども、いつの間にかほんとに寒くなってて毎朝おふとんからなかなか出られずにおります司会はわたくし、ヨーコ・レッドスターがお送りいたしまぁす!
おはようございます、マイケルです。
や~、最近はホントに寒いよね。お散歩中、道路歩いてると肉球冷たくなっちゃってもう。
ね~、ほんとにね~。海辺のエイヘムランドは常夏の国なんて思われがちだけど、実はぜんぜんそんなことなくてバッチリ四季ありますからね、12月なんてよゆーで雪降るし、ホントそろそろダッフルコート出さないと。
雪降るとボク、外出られなくなるからやだな。
そういえばあんたって寒がりよね、そんなに立派な毛皮を着てるのに。
ヨーコだってコート着てたって寒いもんは寒いだろー。それとおんなじだよ。
まあそうか。いくら着込んだって冬は寒いもんね。
でも暖炉の前でゴロゴロするの好きだし、クリスマスもお正月もあるし、なにより寒いとお魚が美味しいし!
ケーキでしょ、おもちでしょ、ハンバーグでしょ! この時期はほんと、美味しいものがたくさんだよね。
だから冬はキライじゃないんだ!
うんうん! これで期末テストさえなければサイコーなんだけどさ~、まあ、あるのよねこれが。
お楽しみの前にバーンと立ちはだかっちゃってまあ、めんどくさいやらうっとおしいやら……
そういうネガティブな話になる前に、ゲスト呼んじゃおう!
あ、そうね! 前置きはこのへんにして、さっそく本日のゲストをお呼びしちゃいましょう!
見た目は小さくても大司教、清貧に甘んじながらも食にはとお~ってもうるさいコノンちゃんでーす!
てゅーっはっはっは! 待っておったぞ小娘よ。
神の御使いに相違ない余をちゃん呼ばわりとは感心せぬが、まあいい。今は少々機嫌がいいのだ!
わお、それはよかった! ささ、どうぞこちらへ~!
なるほどなるほど。確かになんか妙な貫禄があるよなー。
む? そういう貴様は何者だ? 頭ばかり大きくて身はひょろっとしてるのぉ。もしかして貴様もあまり、食べさせてもらってはおらんのか?
ぇあ? いや、そんなことはないけど。
マイケルはもともと細いんだよね。けっこう食べるほうだと思うけど、なぜかぜんぜん太らないという。
栄養というものを吸収せんのか。無駄かつ罪深いのう。
なんかディスられた。
あはは。美味しいものをいくら食べても太らないなんて、女子高生からしたらうらやましい限りだけどね。私なんて毎日いろいろ我慢してるもん。
大食になびかないのはよいことだ。質素倹約に勤しみ、日々の糧への感謝を忘れずに生きてこそ真の豊かさに気が付ける。
つましくも喜びに溢れた生活が真の人間を作るのだ。
わかります。スタイルいい人って食生活ちゃんとしてるしホントにストイックだもんね。絶対誘惑に負けないの! 私は美味しいもの見ると、いろいろどうでもよくなっちゃうからなあ。
我慢してるんじゃないのかよ。
我慢はしてるけど食べないとは言ってない。
そういうわけで今日はですね、美味しいものをたくさん持ってきたのです!
食にうるさいというコノンちゃんでも唸らずにはいられないごちそうがたくさんなんですよ!
うむ、それを待っておった! 美味いものをたらふく食べられると聞いて、わざわざツンドラーレから文字通り、馳せ参じたのだからな!
倹約どこ行った。
そういう細かいことはいいんだよ、マイケル。
だってエイヘムランドにはお魚とかお肉とかお野菜とかお魚とか、美味しいものがたくさんあるんだから!
清貧には清貧の、貪婪には貪婪のもたらすものがある。それを善きとするか悪しとするかはその者の心がけ次第であるからして問題などなにもない。
なにせ余は神の御使いなのだからな!
まあそうだな。あるのに食べないのもおかしいか。
そうそう。私もねー、美味しいもの大好きだからねー、ホントに迷っちゃったんだけど、今日は選りに選りすぐった4品をね、作ってみたいと思います!
え、ヨーコが作るの?
そおだよ? いけない?
あ、いや、そんなことはないけど……
余は食べられるならなんでもよい!
はーい、すぐできますからね。
まずはサンマのカナッペ。これがまあ、とっても美味しいの!
サンマだと! 頂こう!
エイヘムランド近海で獲れたこのサンマをまずは三枚におろして……えへへ、シャレじゃないんですよ。これをこうしておろしましたらね、細かく刻んでタルタルソースと混ぜ合わせる。
えらく手際がいいのぉ。
ありがとうございます。私ね、小さいときからお魚が大好きでだいたいなんでも捌けちゃうんだよね。
で、オリーブオイルを塗ったラスクの上にこの混ぜたヤツをのっけてミニトマトのスライスを合わせたら出来上がり。はい、召し上がれ!
では遠慮なく! はむっ……ざくざく、んむんむ……
おおっ、うまい! 大粒のサンマが生臭くもなくトマトともタルタルソースとも実によく合っておる。
それにこの、奥からひょっこりやってくるこのピリッとした辛味、これはワサビだな?
正解! ワサビの刻んだやつがタルタルにちょっぴり仕込んであります! やっぱりお魚ですからね。お魚の脂にはワサビの清涼感がぴったりなんです。
それにしてもよくわかりましたね~。
無論だ。世は神の御使いだからな。
ところでこれは、もう一個食べてもよいのか? マイケルとやらは食べんのか?
んああ、ボクはいいよ。それはお客様用さ。
うむ! 見上げた心がけだの。では遠慮なくいただこう!
はむっ……ざくざく、んむんむ……んん、んまい。シンプルながらも絶妙な味わいだ。重畳、重畳!
喜んでもらえたようでうれしいです!
では次、おさしみトースト!
なぬ? ……しゃくしゃくしゃく。
でた。
おさしみトーストっていうのはですね、私のオリジナル料理なんです。その名のとおり、こんがり焼いたトーストの上にですね、お好きなおさしみを乗せて食べるという。
まあ、そうだろうの。字面的にはなんとなしにわかるが、しかし味の想像がいまいちつかん。それはうまいのか?
もちろん! エイヘムランドのお魚は美味しいんですから美味しいに決まってるんです。
それはそうなんだろうが、しかしさしみにトーストは、いささかならず変則的だと思うが……
そんなことないです。今カナッペ食べたでしょ? それとおんなじです。
それにね、醤油をちょっぴり混ぜたバターとわさびの風味がトーストとお魚の手と手を繋げるんです。おさしみは今が旬のブリ。ほら、脂がのってて美味しいですよ。はい、どうぞ~。
そ、そうか。なら頂こう!
はぐっ……まふまふ、もぐもぐ…………ごっくん。
どおです? 美味しいでしょ?
……ん~む、確かにさしみは美味いが、なんというか、やはり変則的というか魚の脂とバターがケンカしてるというか。うっすら漂う醤油味がどこまで行っても中途半端な感じだし、諸手を上げて喜べる味かと言うと、そうではないかもしれん。
あれ、そお? 私はこれ大好きなんだけど、ブリ、合わないかな?
ブリが悪いんじゃないと思う。
ん、まあそうだな。さしみはさしみのままか、あるいはせめてアツアツの白米と一緒に食べたい気もするがな。
カナッペの延長だと思うんだけど、やっぱりお口に合わないかー。
やっぱり?
……このおさしみトースト好きなのってヨーコだけなんだ。
ボクはあんまり食べたいと思わないし、パパとママも困惑してる。どう考えてもフツーじゃないよ。
聞こえてるわよ、マイケル。美味しいじゃんおさしみトースト。
それにこんなのフツーよ。今どきはお味噌汁にトースト入れるくらいなんだから。
それにも得心はゆかぬがな。退廃的というか、我が神の怒りを感じるぞ。
わかる。私もどうかと思うもん、トーストお味噌汁は。お料理がいくら自由といっても、それはちょっとやりすぎよ。
うむ。何事にも伝統というものがあるからな。長きにわたって培った叡智をただ度外視し、あまつさえ壊廃せしめん行為を革新とは言わん。
料理の味においてもまた然りであろう。
それじゃ次は、にしんドッグね。
まてまて! 今の聞いてただろう!
だいじょうぶ、これはエイヘムランドの一部地域で受け継がれる伝統的な総菜パンだし、ぜったい美味しいから。まずね、このコッペパンに切れ目を入れて、ちょこっとバターを塗ったら千切りのキャベツを詰めて参ります。
……まさかそこに、にしんのさしみを挟むんじゃなかろうな。
いえいえ、これです。にしんの甘露煮。
かんろに!
そう、しかも子持ち。この甘露煮を頭ついたまま甘辛だれと一緒にパンにはさんでその上にマヨネーズ!
濃いわ~! これ味濃いだろー!
そして最後にちょっぴり七味をかけたら出来上がり!
ううむむ……どうにも腑に落ちんが食べねば無駄になる。
では頂こう……はむっ……んむんむ、むぐむぐむ……ごふっ、ぐへえ~、あまじょっぱ~~~~~っ!
……美味しい?
甘しょっぱいわこれ~~っ、そこにマヨネーズが土足で乗っかってきて、口の中で味が大渋滞だわ~! 頭痛くなる!
ホント贅沢な味わいよね。この甘露煮、頭ついてるし私も初めて見た時はちょっと不気味で構えちゃったけど、いざ食べてみたらてりやきバーガーみたいで美味しくて、一気にトリコになっちゃったのよね。
まあヨーコ、甘いもの好きだしなあ。
それならいっそ、てりやきバーガーでよくないか?
え、美味しいでしょ?
うまくはないが、偏にまずいとも否定できん中途半端さが気に食わん。ただ、少なくともにしんの味はしない。
それに味が濃くてのどが渇く……。
はい、お水。
ありがとう……んく、んく……ぷは~。
だが、この町が豊かなのはわかる。こうも多様な料理と味わいは、うまいもので溢れているからこそ生まれるにちがいない。どれもこれもツンドラーレにはないものだ。
そこは素直にうらやましい。
ツンドラーレって、アラストフ地方よね。カリアタ大山脈のふもとで、一年中雪が降ってるとか。
そうだ。ツンドラーレは雪と寒さに閉ざされている。陽の光は分厚い雲に遮られて暗く、いくら火を焚いても氷は解けぬ。
おまけに食いものは、わずかな麦のほかにはネギとダイコンしかなく、おかげで村の民草全員が貧しいとくる。
控えめに言って、ひどい場所だ。
……だが美しい。天を衝く険峻の峰も、雪に覆われた純白の丘も、夜陰に煌く冷たい霧も、なにもかも。
まさに神が作ったままの姿であろうアラストフは、我々の愚かさも罪も厳として許さず、だから我々はいつも正しいままでいられる。
だから我々は離れられない、ツンドラーレを。余はそんなつましき人々に寄り添い、清きを貫く彼らの生を見守りたいのだ。
そうなんですね。敬虔で清らかな村の人たちの思いには頭が下がります。
神様とか罪とか、そういう難しいことはよくわからないけど、でもみんな、美味しいものをたくさん食べられるといいなって、そんなふうにも思います。
うむ。余も同意見だ。いくら清くても毎日ダイコンの粥では力も出ないからな。このにしんドッグなど食わせたら、村中が活力で溢れるやもしれん。
あるいはもっとうまいものがあれば、教えて欲しい。
もちろんでございますとも。
では最後になりますが、このイクラ丼! これがもうホントの絶品で、エイヘムランドといえばコレ!
確かにね。エイヘムランド産イクラは大粒で味が濃くて、世界中に輸出されてる名産品さ。
イクラなどという高級品は本でしか見たことないが、それはうまいのか?
美味しいよ! ほかほかのどんぶりご飯にこのイクラをどばーッとかけるだけ。シンプルイズベスト! これはもう単純に美味しいだけだから、安心してお召し上がりくださいな!
ほぉ~、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ
……って、こ、これはなんだ……まるでルビーのような輝きだが、これがご飯だというのか! さっそく頂こう!
はぐっ……むぐんぐ、もくもく……ぐむむ、うまい! うますぎる!
こ、これぞまさに千蔵のオキド! いや神そのものかっ!?
さすがにそれは大げさじゃないかな。
んっふふ、でもわかる。私もなにが一番好きかって言ったらイクラだもん。ちっちゃいときからずっとね。
幼きときからこんなものを食べているとは、なんと罪深い所業! 決して許されざる大罪にして厳罰は免れんが、しかしお代わりをさせてくれたら見逃そう!
コノンだってちっちゃいじゃん。まだ9歳だっけ?
10歳だ! その無礼の上乗せでお代わりは三杯だ!
はいはい、まだたくさんありますからね、好きなだけお召し上がりください。
うむ、実によい心がけだ! では遠慮なく頂こう!
ぐぁつぐぁつ……むしゃむしゃむしゃ……んまい! こ、これほどとは恐るべしイクラ……あまりのうまさに我が設定さえねじ曲がるわ!
ずいぶんがっついてるけど、その小さな体でよく食べるよね。
貴様と同じだ。いくら食っても大きくはならん。まったく罪深いことだ。
おいしそう。私もちょっと頂いちゃおうかな。
ちょっとまて! その手に持ってるトーストをどうするのだ?
イクラを乗せるのよ。イクラトースト、めちゃ美味しいのよ?
あ、合うわけなかろうが!
言いたくはなかったが、最近の女子高生はどういう味覚をしておるのだ!
ヨーコはフツーだけど、ここだけは昔からフツーじゃないんだ。
……というわけで、ヨーコ・レッドスターがお送りしましたちょっとフツーじゃないハナシ、今週はこのへんで!
コノンはさ、結局イクラ食いつくして帰ったけど、お腹だいじょぶだった?
ぜんぜん問題なかったわ。にしんドッグも村人ぶん持って帰ったし。
え、そんなにあげたの! 1000個くらい??
20個よ。村人は15人で残りはコノンちゃんがおうちで食べるんだって。
なんだかんだ言ってやっぱり気に入ったのよ。あれ美味しいもん。
そおかねえ。途中でちょっといい話になってたけど、正直、にしんドッグじゃやる気なんて出ないよ。
うなぎパイのほうがよかったかな。
問題あるでしょそのチョイスは。
にひひ、それでは皆さんごきげんよう。よれちょふなは―!
アラストフに麓なんてなかった。