本日のおまとめとニュース
ヨーコ・レッドスターのちょっとフツーぢゃない話!

第九話

……あっ、いた! ヨーコぉ!

マイケル
ヨーコ

あ、あれ、マイケル……? あんたどうしたのよ、こんなとこまで来て!

それはこっちのセリフさ!
こんな夜遅くに一人で家を抜け出すなんてどうかしてる……ってゆうかボクを置いてくなよ!

マイケル
ヨーコ

べ、別にいいじゃん。遊びに来てるわけでもないんだし……

ヨーコ

……はっ、ってゆうかあんた一人!? ま、まさかママたちも来てるとか!?

ボク一人だよ。だいじょうぶ、ママたちはもう寝た。こっそり出て来たんだ。だから安心して。

マイケル
ヨーコ

ほ、焦ったあ……いま見つかったら私、なに言いだすか自分でもわかんないよ……ホントにヤダ。

そうだよね、ヨーコさっき、マジで怒ってたもん。ボクでさえちょっと、怖かったよ。

マイケル
ヨーコ

……ごめん。マイケル耳いいんだもんね。おっきな声出しちゃって、びっくりしたよね。

へいき。隣んちのおばさんのデカくしゃみより、ずっとまし。

マイケル
ヨーコ

……………………

……パパのすかしっ屁が聞こえてくるほうが、よっぽどへこむよ。

マイケル
ヨーコ

……ふふ、あれくさいもんね。

いひひ、マジでくさい。ボク、鼻も利くからね。

マイケル
ヨーコ

え、まさかそれでここがわかったの? 私のにおいを辿ってきたとか?

さすがにそれは無理だよ。ホウキで飛んできたんだろ。そんなの警察犬にだって追えないよ……

マイケル

……でもボクにはわかる。落ち込んだヨーコが行きそうなトコなんて、すぐにね。このコーナーをやるって聞いたとき、ヨーコはホントに喜んでたから、だったらここかなって。

マイケル
ヨーコ

そういうの、見てるんだ。

みてるに決まってる。ちっちゃいときから、ヨーコのことはずっとね。

マイケル
ヨーコ

んふふ、ありがと。

膝の上、行っていい?

マイケル
ヨーコ

いいよ、おいでマイケル。

マイケル

やった! ここがしっくりくるんだ。

ヨーコ

お気に入りよね。

マイケル

うん、よかった。正直、機嫌悪くて口もきいてくれなかったら、どうしようかと思ってたんだ。

ヨーコ

そんなことしないわ。あんたとケンカしたんじゃないんだし。

マイケル

そうだけどさ。でもホント、おどろいたよ。ヨーコがあんなに怒るなんてね。
ママとパパの顔見た? 目ェ丸くしちゃってさ、あれはホントにびっくりしてたと思う。

ヨーコ

……でしょうね。あんなに反抗したの、初めてだもん。私だってびっくりよ。ホント私、どうしちゃったんだろ。

マイケル

ルイに言われたから? ちょっとの反抗も大事って。

ヨーコ

違う。そんなの思い出しもしなかった。ただ、頭に来ただけ。

マイケル

頭に来たんだ。

ヨーコ

うん、頭に来た。私にはなんにもできやしないなんて、そんなのひどいもん。
テストの点だって悪くなかったし、放課後の進路相談で先生にも言われたから、ちょっとリュフヤベルクの編入のこと言ってみただけなのに、どうしてあんなに目くじら立てられなきゃいけないのよ。

マイケル

悪くなかったの、テスト。

ヨーコ

そうだよ、思ってたよりはね。
なのに魔女になったところで私はなんの役にも立てないとか、そんなの目指すなんてただの時間の無駄だとか、そんなことばっかり。いっくら興味がないったってフツーそんなこと言う? ひとが本気でなりたいもののこと、そんなに悪く言ってさ、なんかいいことあるのかなあ。
ほんとわかんないし、そんなの納得いくわけないじゃん!

マイケル

まあ、そうだよなあ。

ヨーコ

私はさぁ、ずっと言ってるんだよ、魔女になりたいって。実際、魔法だって得意だし、学校じゃ友達も先生もみんな賛成してくれてる……そんなのママだってわかってるのにさ、なのにどうして魔女って言うだけであんなに怒るの? 昔なんか、イタズラでもされた? それとも自分がなれなかったから?
おばあちゃん言ってたよ、ママには才能がなかったって、だから魔女が嫌いなのかなぁ。だとしたらそんなの八つ当たりじゃん。子供にそんなことするなんて最低だよね……

マイケル

やめなよヨーコ、いくら頭に来たって、ママのことそんなふうに言うのはダメだよ……。

ヨーコ

わかってるよ。わかってるんだけどぉ……でも私だってもういいかげん、うんざりだよぉ。
小学校出たらリュフヤベルク魔法学校に行きたかったのに、それだって諦めなきゃいけなかったんだよ。おばあちゃんに貰ったホウキだってこんなにうまく乗れるのに、一度だって褒めてくれたことなんてない。
ちっちゃいときから魔女になることだけが夢だったのに、わかってもらえないどころか口にも出しちゃいけないなんて、そんなのちょっとフツーじゃないぃぃ……私もう、やだよぉ……。

マイケル

な、泣くよヨーコ……ボクまで悲しくなるだろ。

ヨーコ

……泣いてない。ただ気分が悪い、ひたすら。

マイケル

そ、それならまあ、いいけどさ……。

ヨーコ

よくない。お腹もすいたし。

マイケル

ごはんほとんど食べないうちに、部屋へ駆け込んじゃったもんね。

ヨーコ

ママ、片づけちゃった? 私のごはん。

マイケル

うん。仕方ないなあって、捨ててた。

ヨーコ

もったいな! んじゃあパパは? あいかわらず知らんぷり?

マイケル

まあそうだけど、でもヨーコが部屋に閉じ籠っちゃったあと、ママもちょっと言い過ぎじゃないかとは言ってた。

ヨーコ

んで今は二人ともぐ~すか寝てると。

マイケル

ボクが言ったんだ。ヨーコは宥めておきますから、って。
で、天井裏から部屋に入ったらもういなかった。

ヨーコ

あんたこそどうしてたのよぉ。ママのお手伝い?

マイケル

まあ、そうさ。仕方ないだろ。

ヨーコ

あんたはなにも言わなかったの? ちょっと私にひどすぎるって。
ってゆうかあんたはどう思ってるのよ、私が魔女になりたいっていうこと、やっぱりよくないって思うわけ?

マイケル

どうとも思ってないよ。そりゃまあボクはフツーに生きていきたい派だけど、もしヨーコが魔女になれるんだったらなればいいと思ってるし、仮になれなくたって、そのときはフツーに生きていけばいいし……

ヨーコ

フツーはイヤなんだってば。私には魔法の才能があるのに、どうしてそれを活かしちゃいけないのよ。理由もなしに諦めて、チャンスを手放さなきゃいけない理由ってなに? ママは私をどうしたいわけ!?

マイケル

だからさあ、危ないことをして欲しくないんだって。だからフツーにしててほしいってことだよ。さっきもそういってたじゃんか。ママはママなりに、ヨーコの将来を心配してるんだ。

ヨーコ

してませんー、ただ気に入らないだけですぅー! 

マイケル

そんなことないって……

ヨーコ

し て ま せ ん!
私にはわかるもん。ああもうほんとヤダ。自分の将来のことくらい自分で決めたい。ここに来たみんなみたいに……。

マイケル

あいつらはいろいろ特別だと思うけど……

ヨーコ

……私には無理ってコト?

マイケル

そうは言わないけどさ。でもだよ? 仮にいま、リュフヤベルク魔法学校へ行けるとしたらヨーコは行く? このままおうち帰らないで、そんな遠くまで飛んでっちゃう?

ヨーコ

今の今なんて無理よ。いろいろあるもん。そんなことできるわけないじゃん。

マイケル

じゃあもし、明日ママがぜんぶ許してくれて、了解ずくになったら行く?

ヨーコ

だから無理に決まってるじゃあん。そんなすぐにだなんて、こっちにだって心の準備っていうのが必要なんだから……

マイケル

あいつらは行くよ。やりたいことがことがやれるんだったら、迷わずにやるだろうね。準備なんていらないよきっと。

ヨーコ

え……

マイケル

選ぶって、そういうことだとボクは思うよ。
本当にやりたいことを選ぶんだったらそれ以外は捨てるしかないし、あいつらはそれが出来たから魔女なんだ。おかしなヤツらばっかだったけど、覚悟っていうか、なんかそういう芯はあった。ヨーコだってそう思うだろ。

ヨーコ

まあ、そうだけど……でも芯なら私にだってあると思う。魔女になりたいのは間違いなく本当だし、魔法だってホントに得意だし、覚悟だって……

マイケル

覚悟?

ヨーコ

あるもん、そういうの……ただちょっと、背中を押して欲しいってだけだよ。私ならやれるって、ママもパパも、そういってくれたら私だってきっと行くよ、リュフヤベルク……

ヨーコ

……なのにどうして反対ばかりするのよ。私は凡人なんだからフツーになりなさいって、そんなことばっかり言われてるからどんどん自信なくなるんじゃん。
このままじゃ本当に魔女になんてなれないよ……。

マイケル

どうなのかなあ。僕はどっちもどっちって気がするんだけど。

ヨーコ

なによ、どういう意味?

マイケル

だからさ、反対してる理由だよ。
ママたちは寂しいのかもよ? ヨーコが一人で遠くに行っちゃうなんてさ。それはヨーコの心の準備が必要ってことと、案外おんなじなんじゃないかなって思うけど。

ヨーコ

だったらそう言えばいいじゃん。なのに役に立たないとか無駄だとか、頭ごなしに言うのはどうしてよ。素直じゃないなんて今さらいうような歳でもないんだし、そんなのおかしいわよ。

マイケル

確かに。そこがボクにもわからない。

ヨーコ

……あんたも寂しい? 私が一人でリュフヤベルク行ったら。

マイケル

ついていくもん。

ヨーコ

ペット禁止だったらどうするの?

マイケル

ペットじゃない、家族だ! ヨーコこそひどいぞ。

ヨーコ

……ごめん。ほんと、いやな気分ってうつるよね。病気みたい。

マイケル

病気さ。イライラ病だ。早く治せよな、ヨーコらしくもない。

ヨーコ

うん……。

マイケル

…………………………………………

ヨーコ

…………………………………………


………………………………私ね。

マイケル

うん。

ヨーコ

……私もね、出来ればフツーでいたいなって、いつも思ってるの。なんか特別っていう自覚もないし、特に目立ちたいってわけでもない。
っていうか、波風なんて起こしたくないし超平和主義だし、できるだけみんなとおんなじでいたいからね、だから学校じゃ絶対に魔法なんて使わないし、フツーの話をしてフツーに勉強してフツーに遊んでる。それがイヤだって思うようなこともない。

マイケル

まあそうだね、悪くないと思うよ。

ヨーコ

確かにね、悪くない。その点ではね、私も結局、ママたちと一緒なんだって思ってる。
普通にして安定した職について平和に生きて……私はそんなおうちにいてなに不自由なく育ったし、それはぜんぜん悪いことなんかじゃない……ううん、だからこそ幸せだったんだろうし、感謝だってしないといけないんだって思ってる。
だから実のところ、ママの言うことだって、少しはわかる。

マイケル

少しねえ。

ヨーコ

……でもだからって、自分の可能性を捨てなきゃならないっていうのも、ぜんぜん違うと思う。

マイケル

可能性?

ヨーコ

そうだよ、可能性。未来にはね、私にできること……ううん、私にしかできないことっていうのが必ずあって、私はきっとそれをやり遂げたいの。
なんて言えばいいのかわかんないんだけど、それがいつか目の前に現れたとき、なんにもできないで諦めなきゃいけなくなるのがイヤなのよ……。

マイケル

…………………………………………

ヨーコ

フツーにしてたい反面で、私はたぶん、それが怖いの。
可能性って、その人の責任でもあると思うし、それを果たせなかった時ぜったい私はこう思うわ。あのときに夢を諦めなければよかったって。こうなったのはあのときに反対してた人たちのせいなんだって、そんなふうに思いながら生きるなんて、私はそんなの、絶対に嫌なのよ……。

マイケル

来たる時のためにやれることはなんでもその時にやっておきたいってことか。なんか適当にフワフワしたこと考えてるのかと思ってたけど、ヨーコもいろいろ難しいこと考えてるんだねえ。

ヨーコ

考えてるよ……っていうかなにそれ、どういう意味?

マイケル

えへへ、ごめんごめん。余計なことさ。でもわかった。どうして魔女になりたいのか、ボクにはしっかり伝わったよ。だったらヨーコこそ、ママたちにそういえばいいじゃんか。きっとわかってくれると思うけど、どうして言わなかったの?

ヨーコ

それは無理なハナシよ。

マイケル

え、どうしてさ。

ヨーコ

だって、今わかったんだもん。自分でも、自分の言いたいことがようやく今、整理できたっていうか、ちょっとびっくり。

マイケル

じゃけっきょく、今の今までフワッとしてたってことか。

ヨーコ

そうじゃないけど……でもまあ、そういうことになるのか。

マイケル

そりゃだめだよね。反対されても文句は言えないよ。 まあでもよかったじゃん。理由ってもんがはっきりしてさ。

ヨーコ

うん、そうかもね。これでもう、わけもなくイラつかないで済むかもしれない。大声を出すより前に、これを言えばいいんだから……

ヨーコ

……ありがとね、マイケル。話聞いてくれて。

マイケル

いいってコト。これでママとも仲直りできるかな。

ヨーコ

それはどうかしら。ただ気に入らないってだけだと、どんな理由も通用しないし。

マイケル

そんなことないってば。

ヨーコ

そう信じたいけどね。それよりあんた、どうやってここまで来たの? おうちから電車で二駅の距離よ、ここ。

マイケル

知らない魔法使いがホウキに乗せてくれたよ。

ヨーコ

えっ、ダメだよマイケル! 知らない人についてっちゃダメっていつも言ってるじゃん!

マイケル

今日は特別! っていうかヨーコが悪い。それより機嫌なおった?

ヨーコ

ぐぬぬ……まあ、おかげさまで、おおむね。

マイケル

そっか、ならよかった! お代はビーフジャーキーでいいよ。なんかお腹すいちゃった。

ヨーコ

あ、そうね、私もだ。じゃあ桟橋通りのコンビニ寄っていこう。ホウキなら10分かからないわ。

マイケル

ゲート桟橋に行きたい。

ヨーコ

じゃ、なにか買ってそこで食べよっか。

マイケル

あ、いいねそれ! でもママたち起きてるかも。

ヨーコ

いいのよ。少し心配かけておくくらいが。

マイケル

なんかヨーコ、今日はいつになく反抗的だよね。

ヨーコ

そうだろうか。こんなのフツーじゃない?

マイケル

いやいや、なんかフツーじゃない……。

本日のおまとめとニュース

あ、あのレーザーが……
トラブル☆ウィッチーズ ふぁいなる!の画像 トラブル☆ウィッチーズ ふぁいなる!の画像

ご予約・ご購入はこちら

ページトップへ戻る