はーい、みなさんこんにちは!
ヨーコ・レッドスターのちょっとフツーじゃないハナシ、略してよれちょふなはのコーナー司会はおなじみヨーコ・レッドスターがお送りします。
マイケルです。よろしくお願いいたしま~す!
あれ、マイケルなんか今日機嫌よくない?
え? 別にそんなことないけどなー。まあでも最近はずいぶん日が伸びてさ、そのぶんちょっと遅くまで外で遊んでても怒られないからね、嬉しい気持ちではあるかも。
あ、まあそうだよね。暗くならないうちに帰ればいいんだから、冬よりは遅くまで外にいられる。
しかもさー、まだ日は伸びるんだろ? 夏なんか夕方になったってまだ昼間みたいに明るいし、8時頃でようやく暗いわけじゃん。
ぼく、外にいるの好きだから、ちょっとっていうかすごくうれしいかも。
私も高校生になったからね、門限も伸びたし、これからは学校帰りにお友達と海辺のカフェとかブティックに寄ってけるんだよね~。
マカーリ・ハーバーから見る夕陽ってめちゃくちゃキレイでさー。これまでだともうちょっと見てたいなーって思っても暗くなる前にはおうち帰らなきゃいけなかったからね、楽しみ!
え、ずるい! それはぼくも行きたい!
だーめだよ。あっちのほうはおうちから離れてるし、都会で人が大勢いるんだからね。あんたはおうちの屋根から見てなさい。
なんでさー! ボクもたまにはそっちのほう行ってみたいよ。ゲート桟橋、夕方になるとライトたくさんついて超きれいじゃん。ホウキに乗せて連れてってよー!
通学路でホウキに乗るの禁止だもん。残念だわ。
ハーバーのほうって通学路じゃないじゃん。だったらいいじゃん!
登下校中ってことよ。いくら寄り道でも下校中だってことには変わりないんだからムリ。
いいもん。そんならボク、頑張って歩いていくもん。ヨーコのいじわる。
だめだってば。あのへんの通りには人が大勢だし馬車だっていっぱい走ってるんだからね、危ないよ。
やだ、やだ! ボクもヨーコと一緒に夕陽みたい! ゲート桟橋とか異人館とか行きたいよー!
まったく困ったコよねー。お目付けってより弟なのよねあんた。
なんとでもいえばいいさ。ボク、ヨーコと一緒にいたいんだ。せっかくの夏なのに……(ひし)
おお~よしよし。わかったわかった。じゃあ寄り道じゃなくて一度おうちに帰ってからアンタ連れてくわ。
ほんと!
ほんとよ。でも生意気いったらダメよ? お友達に失礼なことしたらもう連れてってあげないからね?
しないし、したこともない! やったやった、また楽しみが増えた!
うむ、よかったよかった。
……ん?
ほんでまだ続くのかニャ、このハナシ。
ああ~、ごめんなさい! またやっちゃった!
あわわ、ボクとしたことが!
はい、今日はですね、この方たちに来ていただきました。
あれ、えーっと……
アルニャ。黒猫のアル。プリルの使い魔ニャ。
私はシュプール・シケール。シープ・シール家の執事長にして当主アクア様の使い魔兼マネージャー。シュプールとお呼びください。
ミニッツです~、ユーキ様のお世話をさせてもらっておりますです~。
ポンタだ。妖精の女王……
おまえは知ってる。
……そういうおまえこそ、相変わらず人間なんぞにへつらいやがって。な~にが一緒にいたいだ。もっと堂々と動物らしくしてろ!
どういう意味だ!
へっ、ケンカはよしなよ。オレはトラス。ルイって女にくっついてるが、別に使い魔ってワケじゃねえからそこんとこよろしく。
あのー、ベルガイヤといいます。コノンにはバケモノって言われて信じてもらえませんけど、いちおう父親です。
え、うそ……ぜんぜん似てないけど……
シェーシャだわさ。アークトゥルスのお城に勤めて300年。今はラーヤの面倒をみてるんだわさ。
ほうほう、アークトゥルスのお城にね。行ったことがあるよ。まさに天を突く偉容さ。100年くらい前だったかな。
みんな長生きだなあ。
我が名はあずき。玉垣内国大八洲東乃国の代々内親王の世話役をしているよ。時間には厳しいタチだけど、あとはわりと、どうでもいいかな。
は~い、皆さん自己紹介ありがとうございました! 今日はね、特別企画として魔女のお供の皆さんにお越し頂きました。
普段はね、こう、使い魔ということであまり脚光を浴びないって言ったら失礼かもだけど、影ながら魔女のご主人様を支えている皆さんのご苦労なんてお訊き出来たらなあと……
あれ、でもあいつがいないよ? ぬいぐるみのびーすと。あいつどうしたの?
ああ、びーすと君はね、今日は来ないんだって。でもお手紙もらってるから、ちょっと読んでみるね。
おてがみ? あいつ字書けるの?
んしょ、えーっと……
魔女の使い魔に成り下がってる虫けらども。オレは使い魔じゃなくて偉大なぬいぐるみだからテメーらと一緒になんかいらんねーけど、でも本当は知らねえやつに会うのが恥ずかしくて怖ェんだけなんだ。
オレは将軍と一緒じゃなけりゃなんにもできねえ臆病モンで、ありんこだって潰せやしねえダメなぬいぐるみなのさ。だから行かねえけど悪く思うなよ、殺すぞ!
アレだな。無礼なのは間違いねえけど、なんか憎めねえな。
そうか? 普通に腹立たしいが。
恥ずかしいっていうのはちょっとわかりますぅ……。
あいつなにかと荒っぽいけど、正直だよね、たぶん。
だよね。あのコに必要なのは理解者だわさ。あちしはそう思うよ。
正直になるには勇気がいったと思うよ。わかってあげなきゃ。
別に知りたくもなかったがニャ。ちゅうか、わざわざ読まなくてもよかったんじゃニャいか?
う~ん、つい最後まで読んじゃいましたけど、なんかそんな気もしますね。
彼の誠意に乾杯。
ああ、乾杯だ。
乾杯。
ぼくはやらない。
まねごとニャんぞやっとられんわ。本物の酒を持ってこい。
わっちもそのほうがいいかなあ。
お酒ならあちしも付き合うよ! もうホント最近働き過ぎで。
ホントだぜ。労働者階級はつらいねえ……。
……なんなんだこのノリ。
大所帯だからね、ちょっとした話題が長くなるのよね。
どうでしょう、ズバリ本題に入ってみられたら。このままだとみなさん、世間話とか始めちゃいそうですよ。
あ、そうね。そうしましょう!
はいみなさん聞いて! 今日みなさんにお集まりいただいたのはですね、実はある特別なことをお聞きしたかったからなのです。
その特別なことっていうのはね、ご主人様のコト。お供の皆さんだけが知ってるような、ご主人様のささやかな秘密をね、ちょっとだけでもお聞かせいただいたらと思うのですがいかがでしょうか!
秘密だと?
ふむ、NDAは結んでおりましたかね。
秘密漏洩は打ち首獄門ですからね、わっちの場合。
いえいえ、そんなにね大層なことじゃなくていいんです。なんていうのかな。みなさんから見たご主人様のいいところとか尊敬してるところとか。かわいいなとかえらいなーって思うこととか、あるでしょそういうの。
あくまでもご主人様のアピールみたいな感じでネガティブにならないようなお話ですね。
う~ん、どうかなあ……
あんたはいいの! どうせろくでもないことしか言わないんだから……
……はい。
あ、ミニッツさん! はい、どうぞ!
あのぉ。あだすのご主人はユーキ様といってぇ、ちっちゃくてめんこいお嬢様なんですねえ。
うん、ユーキちゃん、元気で可愛いよね。
乱暴ニャ。元気っちゅうよりは。
はい。でもぉ、元気そうには見えるんですけどぉ、でも実はそうじゃなくてぇ、内心ではとっても寂しがってるっていうかぁ、怒ってるっていうか……
怒ってる?
はいぃ。お嬢様はそのぉ、とっても不幸なことにィ、早いうちにお母さまを亡くしておられましてぇ、それで独りぼっちなんですぅ。
……え。
だからいつもさみしいのはもちろん、どうして自分だけがこんなにつらい目に遭ってるのかわからなくて、それでいつでも荒れてます。
夜になれば一人で泣いてることもしばしばでェ、あだすが慰めるくらいじゃどうしようもなくてェ……
あ、でもお父さんはいるんじゃないの? なんか言ってたよねパパって、技術屋やってるっていう……
そのとおりですぅ。お父様はいらっしゃるんですけどぉ、でもいつも忙しくてェ、お嬢様はちっとも構ってもらえてないんですぅ。
だからあだすが造られてお嬢様のお相手をしてるんですけどぉ、残念ながらお嬢様を喜ばせてあげられたことなんて一度もなくてェ……
あ、あれニャ。兄弟とかはいないんかニャ?
お姉さまが二人いるっていうか、いたっていうかぁ……お父様はお母さまが亡くなられて悲しみに暮れるあまり、お姉さまたちもないがしろにして、それで二人とも出てってしまわれたんですぅ。
お屋敷に残ったのはお嬢様一人だけですけど、でもお父様はそのお嬢様にも向き合おうとはしないで、ただ毎日、つらい思い出に背を向けるようにお仕事ばかりされてて……
……重くない?
典型的な家庭崩壊じゃねえか。
つらいよね、ほんと。身内を亡くすなんてさ、まだ小さいのに気の毒すぎるよ……
そうなんですぅ。毎朝一人で起きて朝食摂って、独りで学校へ行って、ウチに帰って来ても誰もいない。
夕飯だって広いホールで一人でお食べになって、今日起きたことを話す相手なんてあだすだけ……卑しくて醜いこのブタめになにを言ったところで満たされるわけもなく、だからお嬢様はいつでも怒ってあだすを蹴り飛ばしますぅ。
あれま。それはダメなんでない? 当たられても困るわさ。
いえ、いいんですぅ。いくら痛くてもあだすはお父様に造られたゴーレムなので死にはしません。踏んでも引っ張っても煮ても焼いても大丈夫。
だからあだすを蹴って、それで少しでも気が晴れるなら、それに越したことはないんですぅ。
いや越したことあるだろ。
ほおおぉぉぉぉぉ!!! なんと健気なんだろうか! おれは自分のしたことが恥ずかしい~~っ!
泣くんじゃねえよベルの字、水浸しじゃねえか! てめーまるっきり目玉なんだぞ!
いくら痛くても、死なない? なんとまあ、うらやましい。
お嬢様は本当は優しくていい子なんですぅ。ちょっと不幸なだけで、悪いことなんてな~んにもしてない。それをどうかわかって頂ければ、ミニッツはそれに勝る喜びなどありません。
ですな。主人の苦しみは我が身を蝕む腹心の病です。お気持ち、痛いほどわかりますよ。
うううおおおおおお~~~~~~っ!
だめだニャこれは。まるで噴水ニャ。
……ってゆー感じでけっこう重くなっちゃってるけど、これであってる? 今回の主旨。
まあ、そうね……ちょ、ちょっと思ってたのと違うけど、でもそういうこともあるよね。私なんてまだ16年しか生きてないけど、でもつらい時も苦しい時もあったもん。そりゃみんなにだっていろいろあるよね……。
オレの話も聞いてくれ~っ! コノンはなー、コノンもなぁ~~~っ! ちっちゃいときに親に見捨てられちまってすっごい不憫なんだよぉ~!
えっ、そうだったの!?
親って、てめーじゃねえのかい??
そうだが……!
だがってなんだわさ!?
だがオレは捨てたんじゃない……預けたんだ。ここならきっと大丈夫だって、アラストフ大聖堂の司祭にさ。
なのにそいつときたらとんだナマグサで、朝から晩まで遊び惚けて酒ばっか飲んでよ、だから信者が一人残らずいなくなっちまってついには女作ってどっかに消えやがったんだ……幼いコノンを置いてけぼりにしてだぞ! コイツが信じられるか!?
ひ、ひどい話ですねえ……
悪い司祭がいたもんだ。
でもオレはどっちかっていったら、おぬしがどうして我が子を預けたのか気にニャる。
ああそうだ。いい予感はしねえがな。どうしてだい?
あ、いや、それはその……家庭の事情?
ふん。おおかたおまえがどーしようもないクズかなんかで、子供を養うどころじゃなかったんだろ。
クズってなんだクズって! お、おれはただ、バクチが好きなだけだよ。人よりちょっと……っていうかすごく? でも子供だって好きだったし、女房のことも愛してた。一文無しになって逃げられたけど、ずっと愛してた。
ちょっと。ハナシがおかしくなってきた気がするよ?
そんじゃなにか? おめえバクチで金スって女房消えて、そんでいよいよ首回んなくなったから、そんなどーしよーもねートコにコノンちゃんを預けざるを得なかったって、そういうハナシか??
それはちょっと、いくらなんでも。
そうそう、そりゃちょっと省き過ぎだよ。カレーって料理があるだろ? 肉もニンジンもタマネギもジャガイモも入るってのに、そいつがぜんぶ抜けちゃってたら話になんないじゃないか。それと同じだよ。
でもアメタマとトマトとスパイスは残ってますな。ではトラス氏の推測が本質であるといっても、過言ではありますまい。
ああまあ……そうですね、はい、そのとおりです。
ちょっとあんたサイテーだね!
ほら見ろ、人間なんてそんなもんさ。
てやんでいちきしょうめ、バーロィ!
悪い父親がいたもんだ。
でも愛してた! 聖堂の扉の前にコノンを置いてきたあの寒い雪の日……
しかも雪の日に!?
鬼かテメーは。
追われてたから仕方なかったんだ! でも忘れたことなんて一日だってない。あの罪悪感と悲しみ……コノンは今どうしてるだろうかって、毎日気掛かりで仕方なかった……
言い訳にもならん。愛だのニャんだのは食えんからの。気に掛けてもらうだけじゃ、子供は幸せにはニャらんのだ。
そうだけど、でも戻ろうにもオレを探してるやつはたくさんいるし、どうしたもんかと思ってたらある日、起きたらこんな姿になっててさ。
もともとは人間のカッコだったってこと?
う。こりゃ天罰だなーって思って、そんでコノンに頼んで元に戻してもらおうかなって。あいつ司祭だしね。おかげで会いにも来れたし、一石二鳥でしょ?
よく言うわー。そんじゃアンタ、子供のために来たんじゃないじゃない。自分が元に戻りたいだけだわさ。
戻ってきたかったのはホントさ! 10年近くも離れ離れになってた我が子だよ? ずっと会いたかったし、実際会ったら思ってたよりは大きくなってて嬉しくて可愛くて涙出たよ。
しらじらしい。わっちにはね、特別な力があって、相手がなにを考えてるのかだいたいわかるのさ。
あんたはね、結局自分のことしか考えてない。確かに悪いひとじゃあなさそうだけどね、でもそれだけじゃ世の中は渡ってゆかれないんだ。責任を持つんだね。でなきゃいわゆるロクデナシってやつさね。
そ、そうかな。ホントに心配してるんだけどな。こないだだって、なんだかゴミみたいなものを嬉しそうに食べてたから、こりゃなんとかして金増やして、タップリ飯を食わしてやらねえといけない、って思ったよ。
働けヨ、真面目に。そんでちゃーんと食わせてやれ。
ですな。子供がゴミを食べるなど、あってはならない。
ホントだよね。オレもびっくりしちゃったよ。なんか細長いパンの切れ目に、真っ黒なニシンかなんか入れてるの。そこにソースやらマヨネーズやらべっちょりついてて……
それ私があげたやつじゃん! ごみじゃなくてにしんパン!
にしんパン?
え、そおなの? あれ食べもの?
食べものですぅ。私なんて物心ついたときから食べてるのに。あれだってコノンちゃんが村人にも食べさせてあげたいっていうからお小遣いはたいて買ったのに、ゴミだなんてちょーショックなんですけどぉ。
ま、まあまあヨーコ、あれは好みが分かれるって……。
ニャニやらようわからんが、司会を怒らせてしもうたニャ。
あ、ああすまない……オレっていつもこうだ。
誰か楽しい話題はないの? なんだか疲れた人たちのグループカウンセリングみたいになっちゃってるだわさ。
では私めが一つ、アクア様の秘密を。
適当に盛り上げて。
アクア様は偉大なるシープ・シール家の次代当主です。
といってもご両親は魔法協会の幹部でもう長いことお屋敷にも戻られず、10歳ころからほとんど当主としてのお務めを果たされており、さらにそのうえトップアイドルとしても多大なご活躍をされておりますが、そのあたりに関しましてはもう皆さまもご存じかと思われますのでこのへんにしておきます。
誰だい? 知らねーなあ。
知ってることにしておけ。でニャいと面倒なことにニャる。
要するにアクア様は昔からお忙しい。毎日多くの仕事をこなし、誰の期待をも裏切らない。政府要人との会食から地方巡業のキグルミショー出演まで、あらゆる仕事完璧にこなされる。そのうえご自分の美貌を磨くための鍛錬にも余念がない。一日中働き通しで本当にお疲れ様なのでございます!
魔法の修行なんて、聞く限りものすごいもんね。フツーの人にはちょっと無理。
さよう。つまりいつでもお疲れなのですが、ここにもひとつ、尋常一様ならぬ技をお持ちなのです。
タルの中に入って崖から落ちるってよりもすごいこと?
アクションスターなんだね、そのアクアって人。
あれは確か、3年前のこと。その日は早朝から番組の収録が4本も入ってて大変だったのです。
アクア様は移動も含めて分刻みの行動となり、食事休憩もそこそこにお仕事をこなし続けられました。周りに気を配り、一人でいる時も笑顔を絶やさず、それはもうご立派でした。そして最後の収録が終わり、現場から撤収したのが日をまたいだ午前1時。
いくら頑強なアクア様でも相当お疲れのご様子で、我々もロケバスに乗ってすぐに帰途へと着いたのです。
つくづく大変だねえ、労働者階級ってのはよ。
そしてお屋敷に戻られるなり、アクア様はろうそくに火もつけず、すぐに食堂のほうへ参られました。
いつもであれば「あせくさ~い」とか言いながらすぐにお着替えになられるのですが、その日に限っては着の身着のまま、誰もいない食堂の薄暗い片隅で椅子にちょこんと座られてなにも仰りません。ただニコニコとたおやかな笑顔を浮かべられ、お座りになられているのです。私はなにかお食べになるのかと思い、すぐに軽食の準備を致しました。
怪談かい? 何か恐ろしいことが起きる前兆?
私も初めは驚きました。軽食をお運びしてテーブルの上に載せましたけど、アクア様は微動だにせず、ただ微笑んでおられます。私は飲み物がないことに気が付いてすぐにミルクを温めて参りました。しかしアクア様はやはり微笑むだけ。
なにがお気に召さないのかわからず、私はシルバーを変更したり、前掛けをご用意したりしておりました。窓の外の水流が俄かに荒れてプランクトンが渦を巻いていいよいよ不気味な雰囲気です。そのときですよ?
……うん、うん。
アクア様が笑顔のままぐらりと揺れました。そして私が支える間もなく突然軽食に突っ伏して、そのまま横にお倒れになったのです!
どたーんとすごい音がして、ミルクのカップがアクア様の頭に落ちました。アクア様は、あちあちあち!? とかなんとか喚かれながら跳ね起きまして、しかしすぐに私に向き直って、ミルクまみれのまま真顔でこうおっしゃられたのです。
……寝てたわ。
……ぶふうっ、くふ、ふっふふ……あっははははは!
それって目を開けて寝てたってコト? あっはははは!
ははっ、そんなにねむてーのに、どーして食堂なんだよ!
ニャっははははは! おおかた屋敷に着いたときから寝てたんだろうニャ。アヤツなら然もありニャんだ!
ふふふ、面妖なり。わっちのおひいさんも相当なねぼすけだけどね。
あははは……ア、アクアさん目を開けて寝るんだ。しかも微笑みながら! それはちょっとプロフェッショナルすぎません?
ですな。思えばもっと昔から、現場でもそういうお顔で大人しくされてる時があったのです。恐らくあれは、お眠りになられていたのだろうと。もちろん今もです。
ともすると箱馬にちょこんとお座りになられてただにこやかに微笑まれている。大変お美しくて魅力的ですが、あれは寝ている。私にはわかるようになってしまいました。
あ~はははは! やめておなかいたい……い~ひひひ、わわ、笑ったらダメなのかもしれないけどダメ、おかしすぎる……あははははは!
忙しすぎて自然に身に着いたんだろうね。笑っては失礼だ。
イヤまあそうなんだろうけど、でもさすがアクアだ。この場にいなくてもみんなを楽しませてる!
お嬢様もアクアさんのことは大好きですぅ。
ふん、目を開けて寝ることのなにが楽しいんだ。ウチの女王なんてな、しっぽで木にぶら下がったまま寝るぞ。地面に落ちたって起きやしない。そのまま意地汚く眠り続けるからな。
あんたトコのご主人? うちのお姫さんもたいそうなぐうたらだけどね、さすがにそんな寝方はしないだわさ。
下賤な人間ごときにできることではないがな。まあでもいいだろう、では次は僕が女王のことを少し話してやろう。
待ってぽんちゃん!
なんだ人間! 誰がぽんちゃんだゴルァ!
あのね、今日はここまで。時間切れ。
時間切れだと!?
そおなの。ページの都合ヨ。あんまり長いとだめなの。だからこの続きは次回!
そうか。残念だな。
急に素直だな。
騒いでも仕方がないだろ。それに女王の偉大さは逃げやしない。少しくらい待つさ。
ふふ、本当にシンフィーちゃんのこと好きなんだねえ。
す、すす好きってなんだ! 僕は家臣だぞ。崇め奉りこそすれ、すすす好きだなんて……
OKOK! また次回、いろいろ聞かせて。
妖精の女王の裏話ニャんて、そうそう聞けたもんではニャいからの、楽しみじゃニャ。
はい、そういうわけで本日はここまで。今週のよれちょふなは、大所帯で賑やかにお送りいたしました。この続きはまた次回! それではみなさん、あでぃお~~~~っす!
ベルガイヤ(コノンパパ)のショット
怖い。↓